- 出版社 : 同成社 (1983/1/1)
- 発売日 : 1983/1/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 208ページ
- ISBN-10 : 4886210147
- ISBN-13 : 978-4886210142
「特攻隊は、祖国日本を守るために、志願した人達が、自らの命を賭けて戦ったのだ」という美しき神話を打ち砕く本だ。
本心から志願した者もいただろうが、実質的には強制であり、エリート層は特攻隊に行かなくて済むような配慮もなされていた。
だから「つらい真実」なのだ。
一番大事な生命を賭けて敵艦に突っ込むのに、与えられた機材が練習機だったり、旧式戦闘機だったりした時、彼らはどんな思いで死んでいったのだろうか。
そもそも日本軍の飛行機は軽いので体当たりしても威力は低い。また飛行機は空を飛ぶために速度を上げれば自然に上昇する。それを抑えながら敵艦に突っ込むのは技量が必要だ。爆弾を積んでいるとそれだけ鈍重になり戦闘機や対空砲火の餌食になりやすい。
そんな中敵艦に突っ込むのは大変なことだったはずだ。
本書では多数の書籍から出撃数や戦果を調査しているが、書籍によって異なり、正確な数字は結局不明である。ただ、戦果を上げた方の数値を採用しても、航空特攻では、フィリピンの戦いの頃で18.9%。低い数値だと6.7%。沖縄戦の頃は、高い方でも9.9%。低い方だと4.0%。連合軍の特攻対策が功を奏したのか、乗員の練度に原因があるのか、機材の性能低下が問題なのかわからないが、この数字を見ると、決して有効な戦術とは思えない。一刻も早く戦争をやめるべきだったと思う。
命令する側は、安全な場所から自分達は生き延びて、自分達の「員数合わせ」や「面子」のために、死を強要してきた日本陸海軍のエリート達。
敗戦時に、自決したならまだいい方だが、そういう人はほとんどいなかった。
エリート層が自己の保身に走り、代わりに兵達に死を強要していた。
とてもやるせない。
日本という国家の醜悪な側面だが、それは十分に伝わっているとは思えない。