太平洋戦争について、「もし、こう戦ったならば・・・・」といった書籍は多数出版されている。本書もその一つだが、戦略レベルについてまとめている。
本書の要旨は、次の5点だ。
1)日本軍は、第二段階作戦として、占領地域から攻勢に出ず、消耗戦を避けながら、防備を固める
2)潜水艦で連合軍の通称破壊作戦をとる
3)日本軍のシーレーンを防衛する
4)特攻隊をより早い段階で組織化する
5)陸軍をより早い段階で太平洋の戦場に投入する
2)は、確かにそうすべきだった。海軍軍人の中には少数派だが、この考えに立つ人もいた。だが、多数はにはなれず、実際の戦闘では、弱い潜水艦を強い軍艦と戦わせ、戦果を上げることがなかった。3)も確かにそうすべきだった。実際の所、日本は、シーレーンを壊滅され、太平洋戦争に惨敗した。
4)は、欧米人と日本人の特攻隊に対する考え方の違いがよくわかる。日本人がやりたくて特攻隊を組織したわけではなく、「統帥の外道」という認識でやむをえずやったことが、欧米人には理解されていないことに驚かされる。
1)5)は、日本軍が意思統一されていなかったからやりたくてもできなかったことだ。その点では、民主主義国であるアメリカ合衆国の方が、大統領に権力が集中しており、戦略も一本化されていて、効率的に戦争を行える体制だった。
著者は、これらの戦い方によって、1年は戦争が長引き、そうすれば、米ソの対立が始まり、別な形の講和ができたと、主張している。
本書の主張は、なかなか興味深い。一読をおすすめする。