半藤一利・加藤陽子・保坂正康による太平洋戦争に至る道に関する鼎談。
三人の著作からエッセンスを語っている。
二・二六事件や五・一五事件で、事件を起こした軍人を裁けなかったこと。裁けなかった理由は国民世論に逆らえなかったため。
満洲事変を起こした軍人を裁けなかったこと。こちらも国民世論に逆らえなかったため。本来なら統帥権干犯にあたる罪なのだが。
国際連盟を脱退し世界で孤立したこと。
日中戦争(支那事変)を起こした軍人を裁けず、泥沼の戦争に入っていったこと。
こちらも本来なら統帥権干犯にあたる罪なのだが、陸軍のやることを政府が追認することになった。さらに「国民政府を対手とせず」といった近衛声明により、日中戦争集結の道を自ら閉ざしてしまった当時の日本政府。
ドイツの電撃戦により降伏したフランスの植民地だったフランス領インドシナ(現在のベトナム・ラオス・カンボジア)の南部(南部仏印)に進駐した日本軍。アメリカが激怒し石油を禁輸したこと、その後のハル・ノートにより、日本は米英蘭との戦争を決意した。
戦争をどう終わらせるか展望もないままに・・・。
論理的に考えると日本がアメリカに勝てる可能性はないことがわかっていたにもかかわらず中国と戦争しながら、軍事的には禁じ手である両面作戦をやってしまった。
そんな経緯をわかりやすく話している。
詳細はお三方の著書を読むべきだが、新書で概要をつかむには、いい本だと思う。