haruichibanの読書&視聴のおと

読書メモや映画やテレビ番組視聴メモです

アンドレアス・ワグナー 『進化の謎を数学で解く』

生物の進化が偶然に起こるものだろうか? 例えば、目。透明なレンズがあって、網膜があり、まぶたがあって・・・。その構造を誰かが設計せず、偶然に任せたら、1秒間に1個の遺伝子を何兆匹の生き物が試してみても、宇宙の一生を越えてしまう時間をかけてもできないのではないか? 生物の体一つ一つがそんな奇跡なのだ。 本書は、DNAの組み合わせを図書館に例え、本の中の1ページ、1文章、1単語を遺伝子に例え、コンピューターで分析した結果をまとめたものだ。 その結果、遺伝子のほとんどは、一つや二つ、いやもっと違っていても、表現型は変わらないのだ。(中にはたった一個の遺伝子の塩基が違うため致死的な影響や遺伝病になるものもあるが、それはごくまれ) タンパク質も、酵素も、身体の構造も・・・。 我々はできあがった生物から見るので、その生物を形作る遺伝子はたった1個と思ってしまうが、違うのだ。 生物はそんな堅牢さを持っているのだ。 それでいて環境の変化に柔軟に耐えるしなやかさもあるのだ。 コンピューターのプログラム言語は、一文字間違えると、コンパイルが通らなかったり、全く異なる動きをしたりする。 DNAはもっと融通がきくのだ。 本書を読み、進化がプログラム言語のような厳密さがなく、進化が奇跡ではないのはわかった。 しかし、新たな生物の構造のような新機軸(イノベーション)がどうやって起こるのかは、結局、わからなかった。ぞの謎はまだまだ謎のままだ。