加賀恭一郎が登場する連作推理小説だ。
阿部寛主演で、テレビドラマ化されている。テレビがおもしろかったので、思わず買ってしまった。
離婚した元清掃会社社長夫人が、小伝馬町のマンションで殺された。加賀恭一郎は、日本橋や小伝馬町を舞台に捜査をしていく。その過程で、被害者や被害者周辺の、誤解や人を傷つけまいとしてついた嘘が、結果的に人を傷つけていく真実が明かされていく。
孫娘を心配する祖母と祖母を心配する孫娘のいる煎餅屋の話。
嫁姑問題がある陶磁器屋。
娘を勘当した時計屋の主人。
第一目撃者で被害者を裏切ったと思い込んで自責の念にかられている翻訳家。
被害者の元夫とその子供の確執・・・。
いずれも加賀が真相を明かさなければ、誤解が誤解を生んで、大きな確執に広がるところだった。犯人を捜査するだけではなく、「事件の周囲にいる傷ついた人達を助けるのも刑事の仕事だ。」という科白が、かっこいい!
推理と人情を楽しめるいい作品だ。