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アリスⅧ

アリスⅧ  このアルバムは、受験を控えた中学3年生の頃に出た。レコード屋でジャケットを見たとき、三頭のペガサスが正面を向いているのがとても印象的だった。  アリスが「アリスは夏を過ぎて、これから秋に向かいます。」と宣言し、実際に秋をテーマにした作品。私は『アリスⅦ』ではなく、このアルバムに、『秋止符』を入れればよかったのに、と思った。 1. ラ・カルナバル  カーニバルの激しい情熱的な恋を歌った曲だ。南米の激しい情熱がほとばしるような異色な曲だ。 2. 自分白書(マイ・ステイトメント)  「あの頃許せなかった大人が今ここにいる」という歌詞が、受験直前の心に響いた。「今、ここで俺が受験し、高校生になり、やがて大人になった時に、こんなセリフを吐くのかと思うと恐ろしい」、と思ったものだ。  「臆病にならなければ生きていけないのか」という歌詞は大人のなってから響いてきた。大人になるとどうしてもリスクを恐れて、安全な道を選ぶようになる。それが知恵でもあるが、新しいことに挑戦しないことにもなってしまう。アリスは、発言は過激では無いが、実は結構、新しいことに挑戦して、さらっと実行してしまう。おそらく、アリス自身が「臆病になっちゃだめだ」と思って自分達を戒めるためにこの歌詞を歌っていたのだろう。  大人になって自分自身を振り返る時が何度かある。私の場合、この歌詞のように思うことはなかったが、あの頃の俺に言ってやりたいことはある。もし言えるとしたら・・・・あの頃の俺なら、言ってる自分を、「許せない大人」と思うかも知れない。 3. 葡萄の実  同棲していたアパートを久しぶりに訪れた男が、当時を思い出す曲。タイトルの葡萄がどう関係するのだろうか、と思って聴いていると、最後にさらっと登場する。そのさりげなさが詩的でいい。 4. それぞれの秋  進路を考えざるを得なかった中学三年生には強烈な歌詞だった。「鮮やかに死ぬ」か、「ささやかに生きる」か、という対比が強烈に響いた。アリスの発言は、あまり激しさが無い。しかし、初めてのことをさらっとやってしまう。口で言う前に、「鮮やかに死ぬ」覚悟で行動してしまうのが、アリスのすごさなのだ。そういう覚悟がこの歌詞には表現されていると思う。 5. 夏の日に  静かな別れの曲。アリス初期の頃の作品を彷彿とさせる佳作。 6. メシア(救世主)  1999年7の月に人類が滅亡するというノストラダムスの大予言が現実味を帯びていたこのアルバムが発表された1980年。アリスがそれをテーマに歌った曲だ。中学三年生の私は、この曲の歌詞を調べて、Jesus Christがイエス・キリストで、彼がガリラヤの近くのベツレヘムで生まれ、ゴルゴダの丘で十字架に架けられたことを学んだ。 7. 狂った果実  シングルにもなった曲。石原慎太郎の同名小説は読んだことがないのだが、どうやら関係無いらしい。中学生の私には、この曲の歌詞は、難しすぎてよくわからなかった。ただ、けんかっ早い若い男が、ナイフで人を殺し、家族や自分の人生を狂わしてしまったらしいことはわかった。受験を前にして、私は「この曲の男のようにはなるまい」と思ったものだ。 8. 黄色いかもめ  かもめは白いもので、黄色いかもめなんかいるわけない、と思ったが、夕日を浴びて白いかもめが黄色く見えるというわけだ。『アリスⅧ』の少し前に谷村新司が『黒い鷲』というソロアルバムを出していたが、その中に入れると、ちょうど対になって面白い曲だ。「ただ待つだけの人生」を送る女の哀愁ただよう名曲だ。 9. 標流者たち  受験前日の緊張感を、この曲を何度も聴いて、心を落ち着かせた思い出のある曲だ。「立ち止まるならそれもいい 立ち止まれるならば」そう。受験を前にして、立ち止まれっこないのだ。川が流れるように時も流れていき止まることは無い。こういう歌詞は日本人でないと作れないのではないかと思う。