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さいとう・たかを『ゴルゴ13』第634話『ザンゲズール機械化回廊』(『ビッグコミック』2023/12/10号, 12/25号, 2024/01/10号, 01/25号)

2023/12/10号 Kindle版

2023/12/10号 紙版

 

2023/12/25号 Kindle版

2023/12/25号 紙版

 

2024/01/10号 kindle版

2024/01/10号 紙版

 

2024/01/25号 kindle版

2024/01/25号 紙版

 

『ザンゲズール機械化回廊』(2023/12作品)(脚本協力 夏緑) (『ビッグコミック』2023/12/10号, 12/25号, 2024/01/10号, 01/25号)

 

依頼者:イラン機甲師団工廠副官アイユーク少佐

ターゲット:筋電機甲 狂霊(マジュヌーン)

依頼金額:不明

殺害場所:ザンゲズール

殺害人数・相手:なし

 

全4回の長編作品だ。

 

前編(2023/12/10号) (40ページ)

Part1砂漠の月のシャハル

イラン北部、アルメニア共和国との国境地帯を駱駝に乗って移動するゴルゴ13

テントの前でギターに似た楽器ウードを奏でる老婆。

「”マジュヌーン”を知っているのか・・・?」と質問するゴルゴ13

「”マジュヌーン”とは・・・ザンゲズールの麓、イラン機甲師団を夜ごとに襲う機械仕掛けの悪魔。」と答える老婆。

コマにはスターウォーズのAT-ATウォーカーの胴体を丸くしたような機械が描かれている。

「お前が情報屋”シャハル”だな?」ときくゴルゴ13

ウードをの先端をゴルゴ13に向け銃撃する老婆。

ゴルゴ13は駱駝から飛び降り、拳銃を老婆に向ける。

 

ゴルゴ13に銃撃して助かる者はいないが、このシャハルがウードで銃撃することをゴルゴ13はあらかじめ知っていたのだろう。シャハルから情報を得るようだ。

 

Part2 無敵の男

イランの西、ザグロス山脈イラク

この地は武装テロ組織に支配されていたが、カウカブ民兵団が奪還しても結局は支配者が変わっただけで庶民の暮らしは変わらない。

そこにバカル・アル=ダバランという若者がやってきてカウカブ民兵団の男達を倒し、カウカブ民兵団団長アル=シャマリーに気に入られ、カウカブ民兵団に入ることになった。

 

Part3 国王に死を

バカル・アル=ダバランが使った格闘技はイラン特殊部隊将校エブラーヒム・ミルザイが考案したトアだった。

 

Part4 バグダッドの別荘にて

イラクバグダッド郊外

カウカブ民兵団団長アル=シャマリーとともにバカル・アル=ダバランは、スポンサーのイラン民兵軍を従えるイラン機甲師団のもとに向かう。

 

Part5 民兵団の”スポンサー”

イラン機甲師団工廠長官セターレ少将とアイユーク少佐と会う。セターレ少将はイラク南部の都市ファルカダインの米軍基地攻撃を依頼する。

バカル・アル=ダバランはセターレ少将の前でトアを披露し機甲師団の武術教官として迎えられる。アイユーク少佐はセターレ少将に「この機械科時代に武術ですと?」と口を挟む。セターレ少将は、武術の重要性を話し、今ここでバカル・アル=ダバランと勝負せよ、命じる。サーベルを出し構えるアイユーク少佐だが、戦わずに引き下がった。

 

Part6 死を運ぶ銀翼

怒りが収まらないアイユーク少佐は部下に装甲車を運転させて娼館に向かう。

その上空をアメリカ軍のB-2爆撃機が飛んでいく。

 

Part7 爆撃

アメリカ軍のB-2爆撃機がセターレ少将の基地を空爆した。

 

Part8 機械仕掛けの天女

病院で目覚めたバカル・アル=ダバランだが、腕や脚を失った。ベッド脇にはヒゲの男と女性がいた。彼女は四本の機械の腕を背負っており、右手も機械だったが遠隔操作できる手につなぎかえた。

そこはイランのマジャラスタン大学付属病院で、工学部ロボティスク科のスライヤ・ナジュマという女性だった。彼女は骨癌で右手の切断手術を受けていたのだ。

 

中編1(2023/12/25号) (40ページ)

Part1 よみがえる大鷲

バカル・アル=ダバランはスライヤ・ナジュマの作った節電義手と節電義足を使ってリハビリに励みトアを取り戻そうとする。

 

Part2 昼下がりのカフェテラス

バカル・アル=ダバランとスライヤ・ナジュマはカフェテラスで会話する。

節電義手と節電義足の研究費については、「ナジュマ教授が日本のユーイチロー・ホンダというロボット工学者がステッピング・モーターを利用して安価に量産できるようにしているため、問題ない。」とスライヤ・ナジュマは語る。

また、日本のヨウイチ・ミヤワキ教授は第六の指も研究しているそうだ。

二人を遠くから見つめるアイユーク少佐が不気味だ。

 

Part3 爆撃の黒幕

イラン・イスラム共和国 テヘラン 機甲師団本部

ダブリージ外相とアイユーク少佐が会っている。

ターレ少将の別荘をアメリカが誤爆と発表しイラン外務省は遺憾の意を表したが強く糾弾しないこととしたのでアイユーク少佐に機甲師団をとりなすようにダブリージ外相は依頼しにきたのだ。

イラン政府は経済立て直しのためにアメリカとの核合意再建をしたいので、セターレ少将を売ったのだった。

 

Part4 化学の乙女たち

イラン国立マジャラスタン大学工学部

イランでは大学の学生の6割が女子で工業や化学に携わる女子も多い。

節電義手のおかげで女子学生に囲まれるバカル・アル=ダバラン。

軽くふくれるスライヤ・ナジュマ。

 

Part5 ナジュマ教授の懸念

その様子を見ていたスライヤ・ナジュマの義父ナジュマ教授はスライヤがバカル・アル=ダバランに好意を持つことに懸念を持ち「いかん・・・その男はいかんのだ・・・」とつぶやく。

ナジュマ教授はバカル・アル=ダバランを呼び出し雇用契約書へのサインを求める。

 

Part6 バザールの指輪

バザールにバカル・アル=ダバランが指輪を買いに行き、給料が入ったら買いに来るから取り置きするように依頼する。

 

Part7 MR計画

イラン機甲師団工廠

ナジュマ教授はイラン機甲師団工廠から資金を得て研究を進めていた。

筋電機甲技術(マイオ・ロボティクス)を利用した兵器開発計画MR計画(マイオ・ロボティクスけいかく)だった。

そこにアイユーク少佐が「ザンゲズールを監視する機械化部隊の偵察ドローンがまた撃ち落とされたそうだ。」と言って、現れた。

ザンゲズールは対立するアゼルバイジャンが同国の飛び地と本土を結ぶ道路と鉄道の敷設を計画しており、これに反対するイラン機甲師団が見張っていたのだ。

 

ナジュマ教授が開発したのは、偵察対象に近づく筋電機甲(マイオパンツァ)だった。スターウォーズのAT-ATウォーカーに似ている機械だ。そこから小さなドローンを飛ばすのだ。

アイユーク少佐は明日の実証実験を命令する。

ナジュマ教授は心の中で「許せスライヤ」とつぶやくのだった。

 

Part8 勇士の恐れ

スライヤ・ナジュマの寮に花を届けるバカル・アル=ダバラン。

出撃前に彼女に自分の気持ちを伝えに来たのだ。彼女もそれに答えて彼にキスをする。

 

 

中編2(2024/01/10号) (40ページ)

Part1 荒野の防人たち

イラン北部 アルメニアとの国境付近 イラン機甲師団 機械科部隊駐屯地

筋電機甲がザンゲズール山脈の偵察から帰ってきた。

中にはバカル・アル=ダバランが乗っており、崖から転がり落ちて鼻血を出していた。

へこんでいた筋電機甲にお湯をかけて復旧させた。

 

Part2 沐浴

バカル・アル=ダバランは沐浴しながらヒゲを剃っていたが、右手が急に動かなくなった。防水シリコンが劣化しておりショートしたのだ。

この地域の状況を知らないバカル・アル=ダバランに仲間が説明する。

 

親ロシアのアルメニアとイランが仲良しでアゼルバイジャンとは犬猿の仲だ。

アゼルバイジャンは飛び地との間のザンゲズール山脈に道路と鉄道を通したい。

トルコはかつてアルメニア人を大量虐殺したからアルメニアとは仲が悪い。

アルメニアの北のジョージアは反ロシアなので親ロシアのアルメニアとは折り合いが悪い。

ザンゲズール回廊によって中国とトルコが結ばれれば一帯一路がつながりイランやロシアにとっては気味が悪い。

 

Part3 アフターサービス

スライヤ・ナジュマのタブレットにはバカル・アル=ダバランの節電義手の状況が映し出されるようになっていた。彼の義手が故障したことがわかったスライヤ・ナジュマは車でバカル・アル=ダバランのもとに向かう。それがアフターサービスなのだ。

 

Part4 令嬢の悲劇

アイユーク少佐はダブリージ外相の娘を籠絡した。彼女は両親の夕食に毒をまぜ金庫からゴルゴ13の情報を盗み出した。そこにサディーム機甲師団総長から電話が入る。ザンゲズールにアゼルバイジャンが大量の建材を運び込んでいた。

すぐに工廠のエンジニア達を率いて進軍に備えるよう命令が下る。

アイユークは彼女を殺す。

 

Part5 ラティアンダムの魚

アイユークは彼女の死体をダムに捨てる。

 

Part6 迷い込んだ獲物

イラン北部 アルメニアとの国境付近 イラン機甲師団 機械科部隊駐屯地

イラン機甲師団のカージ大佐と会うアイユーク少佐。

ナジュマ教授は筋電機甲のオーバーホールのために大学に持ち帰ることを提案するが、許されない。そこにスライヤ・ナジュマが現れる。

アイユークはすぐに整備しろ、と命じるが、断るスライヤ・ナジュマ。

アイユークは彼女を殴り別室に運ぶ。

 

Part7 疑い、そして・・・

アイユークはスライヤ・ナジュマを犯した。そこにバカル・アル=ダバランが現れた。

スライヤ・ナジュマは川に身を投げた。バカル・アル=ダバランは筋電機甲に乗ってどこかに去った。

 

Part8 歌は終わった

シャハルが歌ったのはここまでだった。バカル・アル=ダバランは毎夜のようにザンゲズールの山を降りて機械科部隊を襲撃し始めた。いつしか狂霊(マジュヌーン)と呼ばれるようになったのだ。

マジュヌーンはアゼルバイジャンの鉄道敷設基地を襲い発電機や銃弾やガソリンや水や食料を補給している。

ゴルゴ13はシャハルにカネを渡しシャハルに注文していたジープに乗って去るのだった。

 

後編(2024/01/25号) (40ページ)

Part1 狂霊(マジュヌーン)

愛するスライヤ・ナジュマを犯したアイユーク少佐を求めて暴れる狂霊(マジュヌーン)ことバカル・アル=ダバラン。

 

Part2 死神に連絡を

バカル・アル=ダバランが逃亡してから1ヶ月。アイユークはゴルゴ13に連絡をとっていたのだ。

 

Part3 テヘランの猫

3週間前、アイユークがゴルゴ13に会い、狂霊(マジュヌーク)の始末を依頼したのだ。

アイユークはその後カージ大佐の始末も依頼するつもりだった。

 

Part4 対決(ショーダウン)!!

狂霊(マジュヌーン)を崖の上から狙撃したゴルゴ13

二人の対決が始まった。

バカル・アル=ダバランはドローンを飛ばす。ゴルゴ13はM16でドローンを破壊するが、頭と背中にドローンが入り込む。自爆装置が作動してドローンが爆発した。

崖の上に上ったバカル・アル=ダバランを装甲車が襲った。

崖下に転げ落ちるバカル・アル=ダバランの節電機甲。

装甲車にはゴルゴ13が乗っていたのだ。

ゴルゴ13はターバンの下にヘルメット、スーツの上に胸から背中には防弾チョッキを着ていた。

 

Part5 "狂霊(マジュヌーン)"死せり

 

別な装甲車が節電機甲に近づく。そこにはアイユーク少佐が乗っていた。

装甲車から降りてマジュヌーンの扉を開けたアイユークにバカル・アル=ダバランが襲いかかった。バカル・アル=ダバランを拳銃で撃つアイユーク。

バカル・アル=ダバランは最期の力を振り絞ってドローンをアイユークの身体の上に落とす。ドローンが自爆しアイユークは死んだ。

 

 

銀英会の近藤を遠距離からゴルゴ13が狙撃した!!

 

1ヶ月前 新潟

柴田が銀英会の近藤殺しをゴルゴ13に依頼していたのだった。

 

Part6 林檎(セイブ)の味

リンゴの収穫を手伝うガーヴ(牛)と呼ばれる車椅子に乗る男。彼はバカル・アル=ダバランだった。そこはいろいろなものが流れ着く川のほとりの病院だった。

そこにはずっと前から入院中の生きることを忘れた娘がいた。

彼女はスライヤ・ナジュマだった。

 

アゼルバイジャンやイランやトルコを巡るややこしい関係と新兵器の可能性がある新技術をうまくとりいれた傑作だ。

今回は節電機甲の狂霊(マジュヌーン)を破壊はするが、パイロットのバカル・アル=ダバランを殺害はしていない。

バカル・アル=ダバランとスライヤ・ナジュマが生きていて再会するラスト・シーンで救われた。