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山本昇 『グローバル仕事術―ニッポン式ビジネスを変える』

■山本昇

■グローバル仕事術-ニッポン式ビジネスを変える

■出版社: 明治書院 (2008/11)

■ISBN-10: 4625684102

■ISBN-13: 978-4625684104

■発売日: 2008/11

 筆者は日本の企業から海外の企業へ転職し、日本企業と海外企業の働き方の違いをまとめた本だ。経済のグローバル化が進む昨今、全日本人必読の書だ。

 巻末に20個のグローバル企業と日本企業の違いがまとまっており、そこだけでも十分価値がある。

 私が一番驚いたのは、グローバル企業では、直属のボスが部下の人事権を握っていることだ。採用するのも直属ボス。仕事内容を伝えるのもボス。評価するのもボスなのだ。日本のように部や課が最初からあって、そこに人が異動するのではないのだ。そういう点では、グローバル企業のボスは、一中小企業オーナーみたいなものだ。

 また、会議の進め方もとても参考になる。日本のように会議前に根回しして、シナリオ通りに会議を進めるのではなく、会議の場で、意見を戦わせるのが基本だ。日本のように宿題にして持ち帰るのでは無く、基本的にはその場で即断即決していくのが原則なのだ。

 日本のやり方に慣れている人が、グローバルのやり方を知らずにいたら、サンドバッグのようにやられてしまう。国際会議の場で日本人が弱いのは、語学だけではなく、こういう暗黙のルールを知らないからなのだ。日本人以外の人々は、欧米人は自分達のやり方だから当然こういうルールを知っている。中国人やアジア人やアフリカ人は、植民地支配されていた関係で、宗主国のやり方を知っている。欧米の文化ではなく、植民地支配されなかった日本人だけルールに無知なのだ。

 海外に行く日本人、外人と日本国内で一緒に働く日本人は、彼らのルールを知るためにも必読の書である。

本書のまとめ

1 採用は、ボスが部下の能力や忠誠心、自分との相性、他のメンバーとの融和性、打算的配慮などで決まる

2 ボスからの忠告

 1 会議は必ず時間厳守

 2 勤務時間内の外出などは了承を得ること

 3 自分の仕事については質を高く保つとともに提出期限を守ること

 4 同僚に対してできるだけよい印象を与えるよう気をつけること。特に新しく入ったばかりのとき

3 誰もがいる勤務時間内の生産性が大切

4 ボスは、部下の仕事の監督権だけでなく、人事権のほとんど全てを握っている

5 トップでえも直属の部下を飛び越えて、その下まで指示しない。部下は、直属のボスを飛び越えて、その上のボスに報告することは許されない

6 部下は、ボスのタイプに応じて行動しないと、仕事を失うこともある

7 水平な関係である委員会ベースの運営がとても有効に機能している

8 ジョブディスクリプションはボスと部下の「契約」と考える

9 ワークプランを部下が書く

10 ジョブディスクリプションは部下の採用枠てもある

11 ボスがジョブディスクリプションの適任者にオファーする。オファーを受けた人が受諾の意思表示をすると雇用契約成立。雇用者も非雇用者も互いに相手を選ぶ権利がある。

12 リダンダンシー(redundancy 人員余剰整理)と解雇(dismissal)は別

13 ジョブディスクリプションは「枠」。部下にとっては自分を守るもの

14 互いに競い合って自分の貢献度を示そうとする。自分がやりたいかどうか、やるだけのグループにとっての「利益」があるかどうか。=>ボスに相談=>即決もある

スタッフ同士の関係はギブアンドテイク。

15 一人一人の貢献度がわかるように互いに協力する

16 相手が休んでいる時に邪魔したり出し抜いてはいけない

17 個人一人一人が堂々と自分の幸福を追求し、仲間が幸福を追求するのも認め合う

18 将来について予測できることを増やすために契約を結ぶ=皆が一緒に守ればその中で自由が得られる

19 約束したらめったに変えない、変えさせない

20 前向きな議論が好き

21 会議はルールを決める場

 1 意見は明確な言葉で自発的に述べるのが原則

 2 人を傷つけない

 3 批判を受けても面子にこだわらず潔い態度を示す。

 4 一度皆で決めたことは、蒸し返したり変更したりしない

 5 議事録は合意した内容だけ残す

2-3 グローバル企業の行動様式

1 互いのメリットになるような仕事をする

2 よくコミュニケーションをとる

3 徒等を組むのはよくない

4 年齢、性別、勤続年数、人種、宗教、肌の色などで差別しない

5 自分たちが支えているから組織がある。組織に対する信仰ない

6 弱みを見せない。他人との傷のなめあいもしないが、弱い人を積極的に助ける

3章 グローバル企業での仕事の基本

1 仕事をする上で、常に個人としての目的や作戦を考えておく。その上で同僚たちとの共同作戦を考える。=一人一人が部下でありボスである。一人一人が「主人公」

2 グローバル企業=一人一人が違うことを強く意識するときと、日本企業=集団的意識のもとで仕事をするときとではルールが全く違う

3 欧米人=仕事のコアを持っていて大切にする

日本人=コアがなく、漠然と何でもやるし、同僚との境界がはっきりしない

日本人的な働き方だと同僚に嫌がられ、ボスに評価されない=その道の専門家と思われるようにしておく。各人の強みと弱みを積極的に集める。

4 職場の中での自分の持ち場を定める

3-2 専門分野を磨くために

1 日本には公式のボスと部下の関係以外に非公式の関係がある。グローバルにはない。組織の内部と外部の差が小さい。=内部の人が出るのが楽。外部の人が入るのも楽

2 武器は専門的な知識と技能と経験

3-3 時間を有効に使うために

会議の開催は誰でもできる

コメントは締め切り前に催促する

最初に時間をかけて先を見通し、内容を確認すること

グローバル企業では一分一秒の単位で時間を考える

4 競争の中で生き残るには

4-1スタッフの全行動に責任を持つのはボスである。グローバル企業では部下に関する全ての判断が、直接のボスに任されている

2 グローバル企業では仕事上、頻繁に同僚と駆け引きする=社内ポリティクス =company politics

3 もめ事がおこったら自分のボスに報告し、ボス同士で調整してもらう。ボス同士でだめならさらにボスに報告し、調整してもらう

4-2 戦いにおけるボスの役割

1 職場を競争の場だと思っていて、同僚同士も競争相手と思っている

2 ボスの重要な役割は自身のグループの利益を守ること

4-3 サバイバルのための戦略

1 個人の貢献と利益を大切にするとともに、それが全体の利益と両立するようにしている

2 まずは防御が必要。自分の強みを売り込み、弱みをカバーする

さらに弱みを強みに変えるよう工夫する

3 サバイバルのためにリスク分散することが大切

4 自分の持ち場を築いて、チームとともに競争に加わる

Ⅲ グローバル企業で活躍する

5 グローバル企業でのキャリアの積み方

5-1 キャリアアップの目的と方法

1 組織に頼らず、独立独歩の視点に立つ

2 組織の観察が必要。若くて成長途上か、成熟して安定しているか、衰退しているか。

3 外部の方がキャリアアップのチャンスが多いし、そのための仕組みが国全体や社会全体に整っている

5-2 ポジションを移る時の心得

1 周りが歓迎してくれる時期に持ち場を固める。周りの人たちの尊敬を勝ち取る

2 グローバル企業ではボスに逆らわない。下剋上がない

3自分がボスになったとき

 電話=早く切り上げ、不測の事態に備えて、身を空けておく

 自室を出るとき=必ず秘書に行き先と連絡方法を伝える

 席を離れた時の判断の仕方や手順を伝えておく

 部下の採用や任務変更には自分でジョブディスクリプションを書く

 採用後は、ワークプランを一人一人に会って相談し、認証し、監督する

 定期的に進捗状況を一人一人ずつ報告させる。

 査定してボーナスや昇給を決める

 部下の動機付け

ボスが交代すると、部下は新しいボスに忠誠を誓う。ボスの信任を得る。

 

5-3 自己開発と情報収集

1 コミュニケーションスキルを磨く

2 ネゴシエーションスキルを磨く

欧米人は小さい頃から、はなす訓練を受けている

旧植民地は植民地にされた経験で欧米のやり方を身にしみて知っている

       使いこなす(use)

はっきり明快なことばでいう(assertive) よく注意して聞く(responsive)

自分から相手へ<=>相手から自分へ

押しの

強い言い方をする(aggressive)相手の言いなりになる(passive)

否定する(deny)

1.契約の分化。個人の自由と尊厳vsしきたりや儀式の分化。集団主義

2.会議で真剣に討議し、決めたルールを皆で遵守するvsグループの意思は根回しによって決定する

3.個人個人の違いを認め、それぞれのイニシアチブを重視する。vs相互の同一性とグループの意思に自分の意思を合わせる態度を重視する。

4.計画を重視し、時間管理はスタッフ個人に任されるvsまずやってみて、臨機応変に変える。時間管理は上司やグループの意思が優先される

5.ボスは部下を直接雇用し、評価し、解雇する。部下の業績や素行にも、ボスが責任を持つ。vsグループ全体がスタッフの雇用、評価、解雇に関与し、人事部が全体の意見をまとめる。仲間の業績や素行もグループ全体で見張る。

6.ボスは、部下と事前に合意したワークプラント評価基準により、仕事の達成度を評価する。vs上司は、グループの相違を考慮して、事後に部下の仕事の達成度を評価する。

7.給与や任務の増大は、能力や組織への貢献による。また、時折の再編成以外には、定期的な異動はない。vs昇進や昇給は、年齢や会社での勤続年数、学歴などで決まる。定期的な人事異動がある。

8.キャリア・アップは外部の組織で行うのが一般的。一人一人が積極的に自己開発のための訓練を行う。vsキャリア・アップは、同一組織内で行うのが一般的。終身雇用を期待する。

9.内部と外部の垣根は、はっきりしない。常に内部と外部の両方からの競争を意識せざるを得ない。vs内部と外部の垣根がはっきりしている。内部にいれば、外部からの競争を意識しないですむ。

10.一人一人の考えと意思を重視する。vsグループの考えと総意を重視する。

11.コミュニケーション、ネゴシエーション、プレゼンテーション技能を重視する。vs忠実さ、従順さ、おとなしさを重視する。

12.リーダーは直接イニシアチブをとる。ボスは、重要で目立つことは、自分で前面に出て率先して行動する。vs実力者は陰に隠れて控えめな態度を取る。上司は、自分で前面に出て行動せず、部下に行わせる。

13.目立つ成果を上げた者は、皆が積極的に賞賛する。グループの利益になるからと考えられる。vs個人が目立つ行為は許さない。これらはグループの結束を弱めると考えられる。

14.スタッフは自分の仕事の達成に集中し、合意の無い限り、他の同僚の仕事に介入しない。vsスタッフは一人一人がグループ全体の仕事の達成に気を配り、個人的な利益を考えることは避ける。

15.スタッフは、自分の私生活を楽しむ自由と権利があるとみなされる。個人の私生活は、お互いに尊重し合う。vsスタッフは、グループが一種の家族のように結束し、必要なら個人の私生活も犠牲にすべきであると考える。

16.個人ごとにコアとなる仕事とそれぞれの持ち場を得る。仕事の内容は、個人ごとに一貫性を持つ。vs個人ごとの仕事のコアと持ち場は不明瞭。仕事の内容は、状況により変化する。

17.組織の内外の競争の結果、専門分野の能力で評価されるため、早くから自分の強みと弱みの分析を氏、専門能力を磨く。vs専門分野の能力よりも広い見識の有無で評価されるため、同じ組織内を異動しながら幅広い経験を積む。

18.物事の決定は、スタッフがそれぞれ自分に委譲を受けた権限の中で自分自身で行う。vs物事の決定は、仲間とのコンセンサスに基づいて行う。根回しや稟議制度などの手続きによる。

19.取引に当たっては、責任者に直接アプローチすべきである。事前の紹介やあいさつなどは必要ない。vs取引に当たっては、事前に有力な官吏などへの挨拶をすべきである。その際は、知人などへの紹介を利用すべきである。

20.回覧文書や情報は、グループ内であっても必要な関係者だけに回す。vs回覧文書や情報は、分け隔てせずなるべくグループ内の全員に回す。