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安彦良和『虹色のトロツキー』双葉社(2010/05/23)

 

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満洲事変からノモンハン事件までの満洲や中国を舞台にした物語。

スターリンに追放されたトロツキーをかついだりそれを防ごうとするなどの思惑を持った日本人、満洲人、モンゴル人、中国人、ロシア人達。

石原莞爾辻政信、尾崎秀実、李香蘭川島芳子ら実在の人物が多数が登場する。

合気道の祖、植芝盛平も重要な人物として登場する。同じ頃、満洲にいた少林寺拳法の開祖、宗道臣は登場しない。

主人公は、日蒙のハーフであるウムボルト。

彼は幼い頃の記憶を失っている。父親の名前さえも。

やがて父親が深見中尉であることを知る。

健軍大学の学生になったり、馬賊になったりしながら興安軍の少尉になる。やがて麗華と出会い愛し合い結婚を誓う。

そして花田大佐と田中隆吉によって父親が殺されたことを知る。だが、彼は父親の敵討ちのチャンスをもらったが、敵討ちはしなかった。

そして1939年のノモンハン事件。機械化されていない日本軍と満洲軍は塹壕で多数の戦死者が出る。「ここは命を賭ける戦場ではない。何としても生きて帰る」と自分に言い聞かせ部下にもそう言うウムボルトだが・・・。

 

1994年秋葉原。父親の最期を知りたいという男と秋葉原で待ち合わせした作者の前に、若き日のウムボルトそっくりの男が現れたところで物語は終わる。

 

■感想:歴史に題材を求め、実在の人物をあちこちに登場させ、架空の人物と交錯させる。安彦良和のストーリー展開は凄い。新京や上海の町並みや、馬賊の襲撃場面やノモンハン事件の様子を描いた場面は、現場にいたかのように描ききっていて凄い。

フィクションではあるが、当時の様子や当時生きていた人達の思いを描いているので、必読の漫画だと思う。

浦沢直樹の『漫勉neo』の第9回(2021年6月9日放送)に安彦良和氏が登場したが、 下書きせずに白い紙に筆で描いていくのには驚いた。SFモノでさえ、筆だそうだ。作者の画力の凄さも含めてこの作品は凄い!!

 

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