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エマニュエル・トッド『アラブ革命はなぜ起きたか 〔デモグラフィーとデモクラシー〕』藤原書店 (2011/9/16)

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■アラブ革命はなぜ起きたか 〔デモグラフィーとデモクラシー〕

■エマニュエル・トッド

■石崎晴己(翻訳)

■出版社: 藤原書店 (2011/9/16)

■ISBN-10: 4894348209

■ISBN-13: 978-4894348202

■発売日: 2011/9/16

 

2011年は、東日本大震災とアラブ諸国の革命が歴史に記憶されるだろう。アラブ諸国の革命については、古くて時代遅れのイスラーム教徒達が進んだ西欧民主主義の自由を求めて起こした、という文脈で報道されることが多い。私はそこに違和感を持っていたのでこの本を手にとった。

 本書は、アラブ諸国の革命を次のように説明する。

 識字率向上とそれによって女性が妊娠をコントロールし、その結果、出生率が低下し、家庭内の力関係が変わり、社会の変化が訪れる。特に識字率が50%を超えた時は、つまり家庭内で息子や娘が父親や母親が読めない文字を読めることになり、親の権威が無くなる時であり、そうなると息子や娘世代が親世代に対して革命を起こすのだ。この変化は、宗教に無関係で普遍的なもので、ヨーロッパ諸国やアメリカ、日本、ロシアや中国でも起こってきたことなのだ。

 本書は、インタビューを元にしているので、説明が断片的でもの足りない。トッドの考え方のエッセンスが散りばめられているだけだ。そのためマスコミ報道よりは納得感のある面白い視点だと思うが、十分はらにおちた納得感は持てない。本書の巻末に訳者がまとめたトッド理論があるので、これは彼の考えをうまくまとめている。

 私は、トッドの考えをもっと詳しく知りたいので、『文明の接近』を買ってしまった。『世界の多様性』も面白そうだ。