■出版社: 新潮社 (2009/08/26)
■ISBN-10: 4106036460
■ISBN-13: 978-4106036460
■発売日: 2009/8/26
■評価:★★★★☆
戦後世代が書いているので、兵器オタクに走らず、当時の歴史的制約を説明しながら、冷静に客観的に、零戦を分析している。
例えば、零戦に防弾装備が無いことが、零戦の欠陥として、よく挙げられるが、零戦開発時に戦闘機に防弾装備が無いのが当たり前で、どの国も第二次世界大戦後半から防弾設備をつけ始めたという、当時の状況を考えると、この批判が的外れであることはあきらかである。
20mm機銃の弾道について、「小便弾」とパイロット達から揶揄されていたが、本書ではそれが目の錯覚であることを、わかりやすく説明している。私は本書以外でこの点をうまく説明している本を見たことは無い。
「零戦が急降下が苦手」と言われる点も、本書では、2つの速度の違いや、同時代の他国の戦闘機の事例を挙げて説明しており、説得力がある。
本書の記述は、科学的で定量的で、一般の日本人の感覚では、ドライで味気ないと思えるだろう。だが、戦争のような非日常的な現場では、このくらいドライに、定量的にものを考えないと、大きなミスに発展する。第二次世界大戦を戦った日本軍が、このくらい定量的にものを考える組織であったなら、多くの生命が無駄に死ぬことは無かったと思う。そして、これからの日本を作っていく上で、日本人は、そういう思考法を学ぶべきではないか、と思う。