■溝口敦 (著)
■暴力団 (新潮新書) [新書]
■出版社: 新潮社 (2011/9/16)
■ISBN-10: 4106104342
■ISBN-13: 978-4106104343
■発売日: 2011/9/16
1980年代終わり頃のバブル期に、大学の「犯罪社会学」の授業を思い出した。当時は、地上げやサラ金の取り立てで、暴力団は大繁盛していた。
あれから20数年経ち、本書を読むと、暴力団も衰退産業になっているそうで、驚いた。
衰退した原因は、日本経済の衰退と、暴対法だ。暴力団組長は組員が恐喝などをすると、使用者責任を問われ逮捕されるため、組員に「喧嘩を売られても買うな」と指導しているらしい。これにはかなり驚いた。政治家は秘書が悪いことをしても「秘書がやった」とごまかせるが、組長はできないそうだ。
”日本では暴力団は、「反社会的集団」であり「半社会的集団」だと思われている。”という主旨のことが本書に書かれているが、「上手いこと言うなぁ。」と感心した。
暴力団は「白いものを組長が「黒い」と言ったら、組員も「黒い」と言うような強力な縦社会だ。そんな縦社会は現代では嫌われてきており、暴力団に若者が入らなくなり、高齢化が進んでいる。縦社会がしっかりあったときはそれなりに秩序があり、統制もきいたが、暴力団が衰退していくと、無秩序になり統制がきかなくなるだろう。
本書によると暴力団が衰退し、「半グレ集団」が成長してきているらしい。暴力団より緩い人間関係で、組織力も弱く一時的な関係で犯罪をやり、儲けたら組織を解散するような集団だ。
そうなると日本の警察組織のあり方も変わらねばならない。アメリカのようにおとり捜査や司法取引や証人保護プログラムをできるようにしないと厳しいと思う。
現在の日本の暴力団について、簡単に学ぶことができる好著だと思う。