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石ノ森章太郎『人造人間キカイダー』秋田文庫

 

 光明寺博士によって作られた不完全な良心回路を持つロボット、ジロー=キカイダー光明寺博士の子供であるミツコやマサルを守るためにギルと戦う。

 光明寺博士の脳を埋め込まれたハカイダー

 良心回路を持たないイチローキカイダー01、とぼけた探偵服部半平らとともにギルと戦う。そしてギルを倒し、光明寺博士の肉体にハカイダーから脳を取り戻す。

 

 これでめでたしめでたし、と思いきや、ギルとギルの組織の幹部の脳を移植したハカイダー4人衆と対決することに。ギルの子供であるアキラやルミと保育ロボットのリエ子が登場する。暗黒スモッグを持つ謎の組織シャドウと戦うため、キカイダー達とハカイダーが手を組むことに。キカイダーは零(00)を作り、シャドウのドロメダ博士とワルダー、ミエコ=ビジンダーは、密かにハカイダーと手を組む。

 このあたりの複雑な同盟関係は、正義の味方と悪者に二分されるのが当たり前の少年誌としては珍しい。

 アキラとルミには最終兵器の設計図が入れ墨として描き込まれていた。それを狙うシャドウと、シャドウから二人を守ろうとするハカイダーキカイダー達。だがギリギリのところで裏切ったハカイダーは、最終兵器アーマゲドンを作り上げる。エネルギー停止エネルギー砲(ESE)によってとらえられたキカイダー達。キカイダー達にも服従装置(イエッサー)が埋め込まれる。

 ギルに服従するキカイダー01、00、ビジンダー達。シャドウを倒した後、ギルと彼に従う01, 00, ビジンダーと対決するキカイダーキカイダーは兄弟の01, 00、そしてビジンダーを容赦なく破壊する。

 驚くギルにキカイダーが言う。「おまえの入れた”悪の心”によって、兄弟も殺せた!」

 そしてハカイダー=ギルを倒す。

 「おれはこれで人間と同じになった。だが、おれはこれから永久に”悪”と”良心”の心の戦いに苦しめられるだろう」

 最後のナレーション「だがピノキオは人間になって本当に幸せになれたのだろうか?」という言葉が重い。

 石ノ森章太郎の漫画(彼の表現では萬画が正しい)は、テレビ番組のテーマをより深く描いた作品が多い。『仮面ライダー』もそうだが、本作もそうだ。彼の作品は一貫して「科学は進歩しているが、人間が私利私欲のために、自然を破壊し人間自身を殺してしまうのではないか」という問題提起をしている。

 本作は半世紀前の作品だが、人類の力が50年前よりずっと大きくなり、地球へ与える影響が大きくなり、地球温暖化などの環境問題が無視できなくなった。50年前に石ノ森章太郎は警鐘を鳴らしていたが、残念ながら人類は何も進歩していないのかもしれない。