『ディープフェイクの亡霊』(2024/01作品)(脚本協力 小倉永慈) (『ビッグコミック』2024/02/25号)(2024/03/10号)
依頼者:Deta社を解雇されたエンジニアであるゴーディ、バーン、クリス、テディの四人
ターゲット:Deta社の謎のエンジニアM
依頼金額:100万ドル
殺害場所:デトロイトのサラ・ホイットマンの家の前
殺害人数・相手:Deta社の謎のエンジニアM(正体はハロルド・スミスに変身したサム・ホイットマン)
前編(2024/02/25号)
Part1 カメラ・アイ
技術者の男が亡くなり、妻、息子、娘の三人に弁護士が遺言について話す。
E-DAT財団に全額寄付するのが遺言だった。
男は動画で遺言を残していた。
しかしその動画を写すPCのカメラを遠隔から見ている若い男が・・・
Part2 ライブ・パフォーマンス
その男がいるスタジオを外から見ている男2人。
男2人の話では、若い男がディープフェイク動画を作る天才のようだ。技術力に加えて心理学を学んでいたからだ。
Part3 素人の依頼人たち
ゴーディ、バーン、クリス、テディの四人は、Deta社のエンジニアだったが、同社がディープフェイク動画を使って金を巻き上げていることを内部告発しようとして、解雇された。
その相手がMだということはわかっているが、Mが誰だかわからなかった。
彼らはクラウド・ファンディングで金を集めてMを殺すことにした。
Part4 ゲームの始まり
4人組はゴルゴ13を探し当て、クラウド・ファンディングで集めた金でゴルゴ13に依頼することにした。
Part5 M、あるいはミスター・ノーバディ
4人組はゴルゴ13に会う。彼にDeta社の社員5000人分のリストを渡し、Mの正体を探り消すことを依頼する。ゴルゴ13はこの依頼を引き受けた。
Part6 フェイクに取り憑かれた男
ゴルゴ13はあるハッカーにMの正体を探るよう依頼する。
ハッカーは会社員のアカウントと名簿の紐付けをし、誰にも紐付けされていないアカウントを発見した。それがMだった。
エンジニアMの実体はないが、裏でMというフェイクの人格になりすましている者がいるのだ。
その男はハロルド・スミス31歳。しかし彼は2009年シカゴの交通事故で死んだハロルド・スミスになりすましていた。
だが、M=ハロルド・スミスであるという証拠はなく、ハッカーの勘でしかない。
「勘だけを頼りに俺が仕事をすることはない。」と言ってハッカーのもとを去ろうとするゴルゴ13。
ハッカーは、スミスの、デトロイトの住所を教え、何か摑めるかもしれない、という。
[感想]
AIやフェイク技術の進歩によって、ここにあるようなことが現実に起こるだろう。
ここからゴルゴ13がどうやってMを特定するか、どんな展開になっていくか楽しみだ。
後編(2024/03/10号)
Part1 デトロイトにて
デトロイトに行ったゴルゴ13はそこで2009年の事故で亡くなったハロルド・スミスの横に写った少年の写真を見つける。そしてその写真の家をつきとめ少年の母サラ・ホイットマンに会い、彼女の息子サム・ホイットマンの行方をきいた。サムはハロルドの事故の後家出し、ナイトクラブの火事で死んだということだった。彼女は鎮痛剤の依存症だった。サラとサムは仲が悪く喧嘩が絶えなかった。
サムの部屋を見て、人工知能の父、マービン・ミンスキーの著作『The Society of Mind』やフランツ・カフカ『変身』(The Metamorphosis)を見つけた。
Part2 ショーン、鍛冶屋の憂鬱
ゴルゴ13が雇ったハッカーは、フェイク・ハロルドが会社に寝泊まりしていること、Mが遺産相続協議中の故人のディープフェイクを作成し偽の遺言を家族に信じ込ませて金をせしめていることをつきとめていた。
Part3 ディープフェイクの亡霊
Mのところに新たな依頼が来た。それはサム・ホイットマンのディープフェイクを作り、彼の遺産をサラ・ホイットマンではなくE-DAT財団に寄付する、というものだった。ゴルゴ13が雇ったハッカーが偽の弁護士になった。
サラは、自分の死後サムの墓の横に埋葬することを条件に、E-DAT財団に寄付することに同意した。
母親がもう長くはないことを知ったハロルド・スミスの顔になったサム・ホイットマンは母親に会いたくなるが整形後の顔で会えるわけがない、と否定する。
Part4 故郷にて
ハロルド・スミスの事故死の後、サム・ホイットマンは故郷を捨てハロルド・スミスとしてイリノイ大学に行った。サム・ホイットマンは故郷デトロイトの母の元に向かう。
Part5 ナザレのM
サム・ホイットマンは故郷デトロイトの母の家に着いた。ドアが開いており、寝ている母が見えた。そこを母親のベッドの陰からゴルゴ13が拳銃でサムの眉間を撃ち抜いた!
Part6 プロの仕事、あるいは素人の狂騒
ゴルゴ13に依頼した4人組はパブで呑んでいた。Mの正体が同僚で同じフロアの仲間だったハロルド・スミスと知った。ゴーディーは「俺たち、現実と仮想の区別もつかなくなっているんじゃないか?」と疑問を投げかける。他の3人は言葉がなかった。
そしてサラ・ホイットマンとサム・ホイットマンの墓が並んでいた・・・。
[感想]
Mをつきとめるためにネットワークではなく足を使って地道に調べていくのはさすがはゴルゴ13だ。
自分自身のフェイク動画を作る羽目に陥ったサム。
不仲だった母親の後悔や母親を心配するサム。人々の心の動きがとてもよく描かれている。
最後のシーンで二人の墓に花が供えられていたがこれはゴルゴ13が送ったのだろうか
AIやフェイク技術の進歩によって、様々な犯罪が発生するだろう。ここにあるような偽の遺言だったり偽の犯罪映像だったり・・・。
進化していくAIやフェイク技術に対して私達はどう対処するのかいろいろと考えさせられる話だった。