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第一章 風(シナド)のトエラ
カブト割り
横目率いる非人達に囲まれたスダレ(苔丸)と正助。それを木の上から見つめる鏡隼人。鏡隼人が横笛を奏でる。横目がカムイに受けた傷のすぐそばに、千本と言われる忍びが使う手裏剣が突き刺さる。それが忍びによる警告だと悟った横目は引き揚げた。正助を襲った犬の眉間にはカブト割りが刺さっていた。鏡隼人の仕業だろう。
傷だらけになった正助をスダレは運び自分も倒れてしまった。
日置流(へきりゅう)
鏡隼人に対決を迫る男は日置流(へきりゅう)の弓を使う左卜伝という男だった。鏡隼人はあっという間に左卜伝を倒し、「私より強い男が城代屋敷にいる水無月右近だ。」と伝える。
橘軍太夫の屋敷に入った鏡隼人は蔵屋からの荷物が大量のろうそくでありその下に銃が隠されていることを調べた。
橘軍太夫は鏡隼人に何か策を話す。そして息子である橘一馬に、鏡隼人の妹、鈴鹿(サエサ)を嫁にすることを話す。鏡隼人は「サエサ・・・」と心の中でつぶやく。
ツムジとコダマ
川原で非人の子ども二人が喧嘩をしている。夙谷のツムジと血深沢のコダマだ。コダマは実は女の子だった。そこに百姓の子が来て、彼らの釣果を盗っていこうとする。正助とナナが止めようとするのを鏡隼人が止める。ツムジとコダマは激しく抵抗して追い返し仲良くなる。
そこに水無月右近がやってくる。鏡隼人は川の中に逃れる。
風(シナド)のトエラ
鏡隼人はやはりカムイの変装だった。彼は指示に従い伊賀に戻ろうとする。そこに仲間が囲み、水無月右近との戦いの時になぜ仲間を殺したか、と問い詰める。ホアケと呼ばれたカムイに刺された男は生きていた。そして、頭領の雲水の命令でカムイを殺そうとした、と言う。ホアケが抜忍になろうとしていたからカムイを殺せと命令したのだと小頭(雲水)が言い、ホアケは仲間の忍者達に囲まれて悲惨な最期を遂げた。
小頭は風(シナド)のトエラが戻ってきた、とカムイに伝える。彼も抜忍で既に5人の忍者を殺していた。小頭はカムイに風(シナド)のトエラ殺害を命令する。カムイは風鳴りの原(ちぎなりのはら)に向かいながら「これがおれの夢だったのか・・・」とつぶやく。
風(シナド)のトエラと会ったカムイは、「なぜ戻ってきたのか?」と問い、共通の師匠である赤目が抜けたことを話す。トエラは「疲れた」と答える。そして戦いが始まった。トエラとは十種の技のことだ。水術・火術・銃・刀術・幻戯・体術・薬活・変化・ギダン・察相のことだ。風(シナド)のトエラは全てを会得した忍びの天才だった。
ついにカムイの背後をとった風(シナド)のトエラ。カムイは逃れようと素早く移動する。ついてくるトエラ。木に飛び移ろうとしたトエラ。彼の枝は折れた。そこに飯綱落としを仕掛けるカムイ。火薬を爆破させて逃れるトエラ。
体力を使い切った二人は最後の勝負に出る。そこでカムイは変移抜刀霞ぎりで風(シナド)のトエラにトドメを刺した。
疲れ切ったカムイは風(シナド)のトエラの隣に寝転び、赤目の下で修業した日々を思い出す。トエラの山陰という技があったからそれを破るために飯綱イタチが空中で鷲を地上にたたき落とすのをヒントに、飯綱落としを開発した。
風(シナド)のトエラを倒したカムイのもとに小頭が現れ、師匠赤目殺害の指令を出した。
日置領花巻村では狂人の小六が歩いていた。忍びとすれ違った瞬間、忍びは殺された。それを見ていた正助は驚いていた。
[感想]
鏡隼人はやはりカムイだった。そして忍びの世界の抜忍に対する厳しい掟が描写される。風(シナド)のトエラとカムイの激闘は見応えがある。小六が忍者を倒した。本物の小六にそんなことはできるはずがないから誰かの変装なのだろうから、この小六は一体何者だろう?
第二章 かくれみの
かくれみの
赤目を狙って日置領に入ったカムイの前に、赤目に倒された忍者達の死体があった。「戦うだけよ。術がすぐれた方がのこる・・・」と自分に言うカムイ。
村からは一揆の首謀者が連行されていた。
首謀者が自首したのだが人数が少ないことに苛立つ城代は橘軍太夫を責める。橘軍太夫は百姓の女達に拷問する。
そこに玉手の千本ばばあが玉手の女全員を連れてやってきた。城代を三角のガキと呼ぶこのばあさんが、一揆の首謀者であり、女を拷問するならここで全員死ぬ、と城代を脅す。仕方なく城代は千本ばばあの言うとおりにする。
その様子を屋根で見ていた鏡隼人(カムイ)に鈴鹿(サエサ)が、小六と正助が鶴巻山に草刈りに入ったと伝える。
小頭はサエサにカムイを探すように指令する。その証拠に左手の小指を切断する。鏡隼人を監視することと、命令と違った行動をとったら殺していい、と指令する。
水無月右近は鏡隼人を見かけて後を追う。そこに願立流(がんりつりゅう)の松林蝙也斎(まつばやしへんやさい)一行が通りかかり、「ああいう男(鏡隼人)におぬし(水無月右近)は勝てない」と言い自分達と一緒に城下に行こう、と誘う。水無月右近は鏡隼人を追う。しかし鏡隼人は「今日は都合が悪い」と言って逆足の術を使って右近をまいた。
正助と小六と、鏡隼人が対決する。正助がカマを投げると驚いたことに小六が鏡隼人を真っ二つにした。鈴鹿(サエサ)はそれを見て驚く。正助が剣を鈴鹿に投げる。鈴鹿は去って行った。それを見ていた謎の影は「あやつらにばけるとは・・・」とつぶやく。正助の目は赤目の目だった・・・。
願立流(がんりつりゅう)の松林蝙也斎(まつばやしへんやさい)一行は城代や橘軍太夫と会う。そして水無月右近と木刀で勝負し引き分ける。城代と松林蝠也斎はガキの頃は同じ釜の飯を食った間柄だった。橘軍太夫は面白くない。
松林蝙也斎一行が帰るところを水無月右近が戦いを挑むが、足譚(そくたん)と呼ばれる飛跳する技で子ども扱いされた。そこに一人の忍びが現れ、しばらくこの領内にいてもらう、と告げる。蝠也斎は「やむをえん」と言って城下に残る。なお、松林蝙也斎は文禄二年(1593)生まれ寛文七年(1667)死去した。
城代と蝙也斎の仲の良さを見た橘軍太夫は面白くない。自宅に帰って鏡隼人を探す。一馬は鈴鹿(サエサ)に迫るが、鈴鹿は弱い男は嫌いだと言って相手にしない。そこに鏡隼人が戻ってきた。驚いた鈴鹿は気を失う。小六に殺された鏡隼人はカムイが伊賀に行っている間の替え玉だったのだ。
鏡隼人(カムイ)は小六を殺そうとするが、本物の狂人なので殺せない。赤目が化けたのは正助の方だと気づいたカムイだが、姉ナナの恋人である正助を殺せない。そこに小頭が現れ、かくれみのの正助を殺せ、と命じる。もし殺した正助が本物の正助でも以後赤目が正助に化けることができなくなるからだ。
正助を狙うカムイ。正助は勉強会で百姓の子ども達に勉強する目的を語る。
ツムジが正助を呼び出す。しかしそれは武士達が正助を一揆の首謀者としてつかまえるための罠だった。ナナが人質にとられ、ツムジは仕方なく武士達に従ったのだった。カムイは助けることもできずに苦しんでいた。
[感想]
忍びの世界に入り個人としては強くなったカムイだったが忍びの世界の掟によってがんじがらめにされて苦しんでいた。忍者の世界はカッコいいとばかり思っていたが『カムイ伝』を読んだとき、全然カッコよくない厳しい世界だと、かつて思った。
第三章 助命金
かけ入り
かけ入りとは罪を犯したものが寺に逃げ込み罪科の軽減を要求することだ。正助がつかまりその父ダンズリもつかまった。スダレ(苔丸)はナナの身が危ないと思い、円竜寺の和尚のところにナナをかけ入りした。
権とスダレは正助を助けるために共闘することにした。権はシブタレをつかまえ密告者が古代(こしろ)の文治だと吐かせた。文治は首をくくって死んでいた。
担保
つかまった正助とダンズリは厳しい拷問を受けるが一揆の首謀者であることは否定する。その様子を天井から見るカムイ。
花巻の庄屋、竹間沢の庄屋、花巻の百姓達に夙谷の非人達まで、正助のアリバイを証明するために城代の所に来た。橘軍太夫はナナが天竜寺に入ったことを知ったがそこに天竜寺の和尚がやってきて機先を制した。蝙也斎は城代に正助に会ってみることを勧める。七兵衛と蔵屋は正助になら千両出しても構わない、と言う。城代はとうとう正助と会う。正助は雲取山の頂上に向かう。忍び達が正助を殺そうとするがカムイがそれを止める。
雲取山の頂上から領内を見せて正助は用水を作り新田を開き日置領を豊かにするのが夢だと話す。
夢屋七兵衛を動かしたのはスダレだった。
助命金
竹間沢の庄屋の依頼で伊集院も城代に正助の助命を依頼する。城代は正助は無罪とするが、一揆首謀者の徹底的処罰をどうするか悩んでいた。蔵屋が助命金を百姓に出させることにしてはどうか、と提案する。武士らしくはないが年貢まで担保になっている厳しい藩財政なのでその手でいくことになった。
正助やダンズリは釈放された。
玉手村の一揆首謀者達は一人二十両の身受け金によって釈放された。米一石が約一両だから二十両は二十石で五十俵に相当する大金だ。
牢屋でそれを聞いた一揆首謀者達は全員自殺した。
怪声
玉手村の一揆首謀者達が自殺したことに頭を抱える城代。
身分の差を明確にし、百姓と非人の分断をはかることが決まった。
アケミを助けていた非人達だが庄屋が禁止する。後ろには横目がいる・・・。
アケミは輪姦されてしまう。現場には非人刀が残っていた。アケミを愛する権はかたきをとると言うが懸命に耐えている。
非人は牢内で自殺した一揆首謀者達の死体を引き回し百姓達の恨みをかう。百姓達によって今度はナナが輪姦されてしまった。ナナは洞窟にこもり誰が近づいても自殺すると言う。
牢から出てきた正助はナナがこもる洞窟に向かう。正助は裸になってナナを抱いて洞窟から出てくる。それを見て山丈が「カムイ」と叫び、正助とナナを肩に乗せて去って行った。
虎乱入
カムイは師匠の赤目を追っていたが、狂人の小六はいない。
鏡隼人に戻ったカムイは橘軍太夫と蔵屋が会話しているところに現れ、夢屋を始末することを指令される。
鏡隼人は夢屋七兵衛と手代の日の市をつけ狙う。
その間に橘軍太夫の屋敷の床下から小六が押し入り用心棒達を全員抹殺した。
松林蝠也斎と小六がすれ違う。
[感想]
玉手村の一揆は成功したが首謀者達が皆自殺するという衝撃的な展開に驚いた。また狂人の小六の正体がわからない。早く次を読みたくなる。
私は小学生の頃に『カムイ伝』を知ったが、本格的に読んだのは浪人時代だ。最寄り駅の近所にあったおじいさんとおばあさんが経営していた小さな書店で立ち読みしていた。その後その店から結局買ったのだが、いつも立ち読みしていたから店としては迷惑だったろう。ゴールデンコミックス版『カムイ伝』はその頃もうあまり書店では見なくなっていたので、ゴールデンコミックス版が置いてあったその店は私にとっては貴重だった。
その店ももうなくなってしまったが、今では懐かしい思い出だ。