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サミュエル・ハッチントン『文明の衝突と21世紀の日本』集英社 (2000/1/18)

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■文明の衝突と21世紀の日本 (集英社新書) [新書]

■サミュエル・ハンチントン (著)

■鈴木 主税 (翻訳)

■出版社: 集英社 (2000/1/18)

■言語 日本語

■ISBN-10: 4087200159

■ISBN-13: 978-4087200157

■発売日: 2000/1/18

 

 「冷戦後の戦争の原因は、"文明の衝突"になる。アメリカは多様化を認めるのではなく、西欧文明の代表者というアイデンティティーを持つべきだ。」というのが本書の主張だ。

『文明の衝突』は一昔前にかなり話題になった本だが、著者が選ぶ「文明」はとても曖昧で恣意的だ。東アジアについていえば、中国文明と日本文明しか著者は挙げていない。明らかに「遊牧民文明」があり、中国文明はそれへの恐怖と戦ってきたし、モンゴル帝国や清帝国のように「遊牧民文明」が中国文明を圧倒し支配した時代もあったのだ。清帝国滅亡後、「遊牧民文明」は現代社会に影響を与えていないのは事実だが、滅んだわけではないし、いまだに中国にとってのアキレス腱であることは確かだ。

 日本は、「一カ国で独自の文明を持つ特殊な国だが、強大化する中国に対する戦略としては、これまでと同様最強の国(日露戦争時のイギリスや戦後のアメリカ)と同盟を結び、中国に対するか、中国と同盟を結ぶか、選択しないといけない。」と言うのが著者の主張だ。「日本は決定することを先延ばしするだろう。」と正しく日本の動きを読み切っている。

 著者の主張は、経済的に複雑に国と国が絡み合ったグローバル経済の21世紀の世界では、資源争奪のような経済的な原因での戦争は起こっても、文明間の違いを原因としては起こらないと私は思う。文明の違いを戦争の名目にするかもしれないが、実態は経済戦争となるだろう。

 本書は1990年代のアメリカ知識人の国際社会の見方を代表しているだろう。しかし、『フラット化する世界』や『文明の接近』の方が、21世紀の世界を正しく予言する本になると思う。