■大島堅一
■原発のコスト――エネルギー転換への視点 (岩波新書) [新書]
■出版社: 岩波書店 (2011/12/21)
■ISBN-10: 4004313422
■ISBN-13: 978-4004313427
■発売日: 2011/12/21
福島第一原発の事故で、日本の原子力発電について、多くの議論がされている。その主要テーマの一つとして、コストが挙げられる。
本書はそこに焦点を絞っている。
だが、コストについては、いろいろな機関がいろいろな数字を挙げているが、事故発生確率と事故発生時の賠償金額を算出できないため、どの数字もあてにならない。また、使用済み燃料の保管費用の見積もあてにならない。廃炉費用もだ。
電力会社や政府が挙げている数字よりも本書の方が納得感がある。
それにしても、本書を読んで思ったのは、日本のように地殻変動の激しい地域では、原子力発電は不向きだと言うことだ。また原子力発電は発電後のコストや管理がとても大変だということだ。時間感覚が全く違うのだ。ビジネスの世界が四半期単位や長くて年単位。人生が数十年単位なのに比べて原子力発電後については、万年単位でものを考えないといけない。仮に地下深くに使用済み燃料を保管しても安全とは言い切れないことだ。田んぼだったところがわずか数年で隆起し今では昭和新山になった所もある。1万年前の縄文時代には海だったところに今では人が住んでいる。同様に使用済み核燃料を埋めたところが1万年後に海になる可能性を否定できる人はいないだろう。そして海になった使用済み核燃料施設から放射線が漏れないと、誰が言い切れるだろうか?
その時政府は「想定外」で片付けるのだろうか?