手塚治虫が1974年から1978年にかけて週刊少年マガジンに連載した漫画だ。
科学力ゆえに滅亡した古代三つ目人の末裔である写楽とそれを助ける和登さんの活躍を描いた漫画だ。
科学が発達しすぎて人類が滅んでしまう、という状況は、当時の漫画によくある。
三つ目人は、あちこちの遺跡にその痕跡を残していた。メキシコのピラミッドや、イースター島や、縄文土器や、酒船石や、石庭などなど。
写楽はその謎を解くが・・・
ばんそうこうをつけたときと外した時の二重人格。
長編7編、短編32話だ。『週刊少年マガジン完全復刻版 三つめがとおる』は、長編のうちの「イースター島航海」について、連載時のままに復刻したものだ。漫画文庫版の第5巻から第6巻に相当する。
驚いたのは、登場人物のうち、重要な脇役である「さまよえるオランダ人」の弟が、写楽の同じ学校の生徒から、外国人のバン・ドンに変わったことで、そのために、何ページも修正したりページを追加していることだ。その他、細かいセリフの修正がある。
雑誌掲載時と漫画文庫版を読み比べてみてほしい。
手塚治虫がまさに天才だったことがよくわかる。
この漫画に通底している思想は、文明の発展しても人類はそれゆえに自滅してしまう、という考えだ。三つ目人や長耳族はそれで滅んでしまった。
現代の人類がそうならない保障はどこにもない。
この漫画が描かれた頃には地球温暖化問題はなかったが、公害や冷戦真っ只中だった。
この漫画が描かれてから、約半世紀経過したが、状況は変わらないと言っていい。
否、地球温暖化やロシアによるウクライナ侵略で、むしろ、進んでいると言ってもいい。
たかが漫画だが、この漫画は現在でも読んでみる価値ある漫画だと思う。